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HN:飛鳥(あすか)
「世の中すべて広く浅く」
ぬるく生きています。



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プロローグ終わって、スタートです。

カテゴリの「世界樹」は、全部創作物になるので、興味ない人はシカトしてください。

忠告したからなw
俺、忠告したんだからなwww


とりあえず、「1」なんですが、長いです。
きっと時間かかります。
なので、明らかに暇な人、かつ話が分かる人だけ読むといいと思いますよ^-^

では読む人は「つづきはここで」からどうぞ。

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  1

 「ここがエトリアか。有名なわりに発展してないな」
門をくぐっての第一声。フォスターが発した言葉通り、エトリアは発展途上という単語がふさわしい街だった。
中央広場の中心に設置された噴水からは、たどり着いた冒険者の正直な一言に対して、まるで抗議でもするかのように勢いよく水が噴出していた。
エトリアは中央広場を取り囲むように店が立ち並び、入り口の正反対に位置する街道沿いを中心にして民家が立ち並ぶ。ある程度の人口は有しているものの、街と呼ぶにはいささか規模が小さい。
大陸各地を巡ってきたフォスターは、広大な敷地を有している都市を多く見てきたこともあってか、この規模の街に立ち寄るのも久し振りのことだった。
「とりあえず宿屋を探して、後は明日だな」
そうつぶやくと、ぐるりと辺りを見回して宿屋を探す。時刻も夕方を過ぎ、広場や街道の人通りも少なく、民家の立ち並ぶ居住区からは人が住んでいることを思わせる暖かな光が多く見られる。夕暮れ時の景観を眺めながら探すこと5分程度。中央広場の一角に「長鳴鶏の宿」という宿屋の看板を見付け、中に入る。
「いらっしゃいませ」
見るからに物腰の柔らかい若い店主がカウンターに立ち、フォスターを歓迎する。
「みたところ冒険者ですね。あなたもあの迷宮に入るんですか?」
エトリアに来る冒険者がすべて「世界樹の迷宮」しか目的が無いような、そんな素振りで気さくに話を振ってくる店主にフォスターは、
「そうだ。とりあえず一夜の宿をお願いしたい」
と軽く流して手続きを済ませ、通された部屋で一息つこうとした矢先、
「お客さん、迷宮に行くなら一人だと自殺行為ですよ。一度冒険者ギルドと執政院ラーダに顔を出してみてはいかがでしょう。それに、迷宮へ行くなら執政院ラーダで許可をもらわないと中に入ることすらできませんよ」
聞いてもいないのにこうも親切に話してくるにはわけがある。
執政院ラーダが設立される以前からも、多くの冒険者が一人、あるいは少数で迷宮に入ることも多かった。だが、行ったきり戻らない冒険者が後を絶たず、大陸を束ねる中央政府がそれを見かね、この地に執政院ラーダを設立。そこで迷宮の管理をすることで冒険者の無駄死にを少しでも軽減してきたからだ。
「感謝する。明日にでも行ってみることにしよう」
先ほどと同じく店主の話に軽く受け答えし、フォスターは布団に潜り込んだ。

 翌日、店主の言葉通りギルドに向かうフォスター。教えてもらった先には「金鹿の酒場」と書かれた洒落た看板と共に、「冒険者ギルド」とだけ書かれた味も素っ気もない看板が下がっていた。
中に入ると数人の冒険者がいるだけで、他にはギルドの店主と思われる女性がいるだけ。その女性がフォスターに気付き話かけてくる。
「あら、冒険者ね。いらっしゃい」
歳の頃は30前後という艶っぽい女性の声につられ、中にいた数人の冒険者がフォスターを見るが、さして興味も無いのかその視線もすぐ元に戻す。
「迷宮に入るために仲間がいるが、同じような目的の冒険者はいないか? なるべく足を引っ張らないヤツがいいんだが」
自分の要望だけを率直に伝え、酒場兼ギルドのマスターである女性の返答を待つ。
「ごめんなさいね。今丁度だれもいないのよねぇ~。さっきも何人か来たんだけど、登録者が最近少なくて……」
と、女性は心底残念そうな顔をしながら話す。
「そうか、仕方が無いな。また来る」
と言って立ち去ろうとするフォスターに対し、マスターである女性は時間を空けてまた店に来るように言った。
「事前に登録してくれる人もいるんだけどねぇ~。そういう人が来るかもしれないから、また夕方辺りに来てもらえるかな?」
フォスターは一言「分かった」とだけ言うと、ギルドを後にする。

 ギルドのシステムは、冒険者が急激に増加した数百年前に生まれたもので、方法自体は進化しているが、その基礎となる部分は変わっていない。
前もってその土地ごとの主要都市にあるギルド教会へ登録すれば、行き先を告げるだけで仲間を探してもらうことができ、行った先々の街でも主要都市のギルド協会が管轄しているエリアであれば、同じ目的を持った冒険者を比較的簡単に探すことが可能なのだ。
ただ、そうしたシステムをフォスターは好まないため、もちろん登録もしていない。フォスターは一人で行動することが多く、登録して他の冒険者からいちいち声がかかるのをめんどくさいと感じているからだ。まあ、今のような状況の場合は逆に不便ではあるが。

 酒場兼ギルドの「金鹿の酒場」を後にしたフォスターは、とりあえず時間を潰すために昨晩「長鳴鶏の宿」の店主に言われたことを思い出し、「執政院ラーダ」へ向かうことにした。
中央広場から、民家が密集する居住区とは別に伸びる道を行くと、エトリアの中でも唯一の高層建築物といえる「執政院ラーダ」の大きな門が見える。
「執政院ラーダ」は「世界樹の迷宮」の警護と管理をしており、迷宮に入るためには許可をもらう必要がある。そのほか、「執政院ラーダ」から冒険者に対してミッションを依頼することもあり、もちろんそれ相応の報酬もあるため、冒険者ならば必ず立ち寄る場所であるといえる。さらに、迷宮で未知の生物を発見した際などに、それらを管理する役割も果たしている。

 許可をもらうために門の前に来ると、入り口には鎧兜に身を包んだ兵士が二人、門の両脇に立っている。フォスターが近づくとおもむろに持っていた槍の柄を地面に軽くたたきつけ、フォスターに静止を要求する。
「止まれ。執政院ラーダに何用だ」
低い声で話しかけてくる兵士に対し、フォスターは迷宮に入る許可を得に来たことを伝える。
片方の兵士が何やら別の兵士に伝言を伝え、待つこと2,3分。門の奥から二人の兵士に付き添われた男がフォスターの下へ向かってくる。
「入りたまえ。迷宮探索の手続きをさせよう」
言葉は強いが穏やかな口調で話す男の言葉に合わせたかのように、大きな鉄の門が開く。
男に続いて中に入ると、吹き抜けになっている高い天井が空間の広さをより強調し、壁のステンドグラスを経て差し込む太陽の光が明るく室内を照らし出していた。
「改めて挨拶しよう。私はこの執政院ラーダで迷宮の管理を取り仕切っているガディウス。あなたは、冒険者としてはここが初めてですかな?」
唐突に質問されたがフォスターは至って冷静に、そして簡潔に応える。
「いや、違うな」
少し引き締まっていた男の表情が緩み、笑顔になった。
「そうですかそうですか。見たところなかなかのキャリアがありそうだとは思いましたが、一応確認のために聞かせていただいた所存。いやはや最近は自称冒険者と名乗る輩が多くて困っているのですよ。先ほども二人組の男が怒鳴り込んできたのですが、ただの賊に過ぎない輩で。犬死するだけだと言って許可を出さなかったらさっさと出て行ってしまいましたよ。やれやれ参りますな」
その後も、愚痴にも似た男の話を長々聞かされていると、室内の奥から兵士が現れて何やら書類を男に渡した。
「おお、来ましたな。ではこちらに出身地とサインをお願いします。何、手続きと言っても実はこれだけなんですよ」
軽く苦笑いしながら言う男を横目に、言われた通りサインして紙を返却する。
「迷宮はとにかく危険な場所です。あまり無理をしないでくださいよ。死人が増えるとこちらも困りますからな」
本気なのか冗談なのか分からない顔でフォスターに向かい話す男。
「忠告はありがたく聞いておく」
そっけない返事と共に、フォスターは「執政院ラーダ」を後にする。

 「執政院ラーダ」を出ると、太陽はほぼ真上に昇っていた。朝食も軽めだったフォスターは、食事をするため宿屋に向かうかギルドに向かうかを悩みながら街道を歩いていく。
と、中央広場に差し掛かろうとするところで、建物と建物の間から誰かの声がする。
「や、や、やめてください!!」
ふと見ると、年の頃としては14,5歳の少女が二人組の男に絡まれている。
「その持ってるモンを渡してくれればそれでいいんだよ! ッヒヒ」
「おとなしく渡してくれれば何もしねぇさ。何もな。イッヒッヒ」
見るからに冒険者崩れのその二人組は、少女にナイフを突きつけて脅している。
めんどくさいものを見てしまったと後悔しながらも、フォスターは仕方なく助けるために二人組の後ろから声を掛ける。
「こんな執政院に近いところで恐喝とは、お前ら頭が悪いな」
いきなり声を掛けられた二人組は、驚いてフォスターのほうへ振り向く。
「何だおめぇ!?」
「ひょろいにーちゃんが何かっこつけてんだ? あぁん?」
人数で勝っている二人組は強気な姿勢で、一人は少女へ向けて、もう一人はフォスターへ向けてナイフを突きつける。
「あっ、う……に、逃げてください!」
叫んでいるつもりなのだろうが、フォスターにやっと届く声で少女は言う。
「……お前ら、もしかしてラーダを追い出されたやつらか」
もしかしなくてもそう見える二人組は、声を荒げて話す。
「あぁん!? うるせぇ!! あんな許可なんぞ無くたって、迷宮なんて行けるんだよ!!」
「どいつもこいつもビビリやがって! あんな許可がなきゃ何もできねーなんてただのガキだガキ!!」
負け犬の遠吠えとしか聞こえないその反論も無視し、フォスターは恐怖で身動きが取れない少女に向かって言う。
「……まあ、そこでじっとしてろ。すぐ助けてやる」
その発言で余裕の表情を浮かべながら、二人組は尚も賊っぽい発言を繰り返す。
「おいおい、にーちゃんひとりでどうしようってんだ?」
「こっちは二人、そっちは一人。しかも俺たちゃアティルスの迷宮に入って生きて帰ってきたんだぜ?」
アティルスの迷宮とは、大陸の北にある迷宮で近年発見された迷宮でもある。中の構造はさほど入り組んではいないが、凶暴な獣が多く存在するため冒険者の中でも中級クラスの冒険者たちが挑むことが多い。(ただ、この二人組。生きて帰ってきたといっても、入り口からさほど離れなかったため、初級者同然であるが)
そんな脅しを続ける二人組に、フォスターは呆れながらも最後の忠告をする。
「今なら許してやってもいいが……どうする?」
余裕のフォスターに業を煮やしたのか、二人組は少女を突き飛ばしてフォスターに襲いかかる。
「てんめぇ! 痛い目見なきゃわかんねーようだな!!」
「ぶっ殺してオメーの荷物も全部もらってやるよ!!」
一人は突きを、もう一人はナイフをフォスターに向けて振り下ろしてきた。それをフォスターは紙一重で避け、片方の背中に肘、もう片方の腹部に膝蹴りを食らわせて1発KO。
二人組はいともあっさり気を失った。
「大丈夫か?」
突き飛ばされた少女に近付き声を掛けるが、少女はフォスターを見たまま返事がない。
「おい、大丈夫か?」
すると少女は一瞬驚き、そして感謝の言葉を述べる。
「は、はい。大丈夫です。危ないところを、助けていただいて、ほ、本当にありがとうございます」
どことなくおどおどして見えるその少女は、自分から立ち上がり、再度フォスターに対して頭を下げる。
「えと、あ、ありがとうございました。わ、私はリンって言います。お、お、お、お名前だけでも聞いていいですか?」
リンと名乗った少女はぶんぶんと頭を上下しながらお礼を言い、名前を聞いてきた。
「俺はフォスター。別に名乗るほどじゃないが、冒険者だ。まあ気を付けろ」
王子様でも見るかのようなリンの目に圧倒されそうになるところを堪えて、冷静を装い淡々と話し、フォスターはその場を後にしようとする。すると、
「あ、あの、私も冒険者なんです。今はお姉ちゃんと一緒にこの街に来てて、えと、それで、明日までは金鹿の酒場(冒険者ギルド)にいるので、ま、また会えますよね?」
普段積極的という言葉からは程遠い場所にいるリンだが、このときばかりは自分でも驚くほど積極的に話ていた。
「また、縁があればな」
それだけを言い残してフォスターは宿屋へ向かった。

 昼食後、再度街の調べをするべく歩き回ることにしたフォスターは、この街で唯一の武具屋「シリカ商店」に来た。
店主のシリカが快く店に招き入れてはくれたものの、フォスターは愕然とする。
「おい、ここは武具屋なんだろ?」
呆れたような声色を混ぜつつも、いつものように淡々と話す。
「え、まあそうなんだけど、実はここのところ迷宮に入っても逃げ出すやつばっかでさ。正直言うと材料が無いんだ。だから作りたくても作れなくてさぁ」
開き直ったかのようなシリカの発言だったが、事実このシリカ商店には、品物という品物はほとんど無い。
立ち並ぶ商品は、むしろ家庭用品などが中心になっていた。
「なら、迷宮から素材を持ってくれば物は作れるんだな?」
確認のようにフォスターが聞くと、シリカはもちろん笑顔で答える。
「それはもちろんだよ! 私の腕を甘く見ないでよね。素材があればなんだって作れるさ。あ、いや限界はあるけどね」
最後の言葉が頼りなかったが、シリカの言っていることは間違いではなさそうだった。
それを理解したフォスターは、素材を持って来ることを約束して店を後にした。


 フォスターに助けられたリンは、足早に冒険者ギルドでもある金鹿の酒場に戻った。
中に入ると、待ちくたびれた顔をした女ダークハンターが声を掛ける。
「リン! 遅いじゃない! 今まで何してたの!? 心配したんだからね!」
その言葉にリンは申し訳なさそうに答える。
「あ、お姉ちゃんごめんなさい。執政院でお姉ちゃんと別れた後、怖い人たちに……」
リンが言い切る前にお姉ちゃんと呼ばれていた女ダークハンターが声を荒げる。
「ちょ、ちょっと! それで、どこも怪我ない!? 何もされてない? 大丈夫? どいつよ! 私の妹を襲おうなんて馬鹿な事考えたやつらは! 今すぐ叩き潰してやるわ! 言いなさい!」
リンの肩を掴んで怒涛の如く叫ぶ女ダークハンターに、嬉しさを顔に出しながらリンは言う。
「あ、えっとね。大丈夫だよ、何もされてないよ。襲われそうになったところを、別の冒険者さんに助けてもらったの」
顔を赤らめながら話すリンを見て、とりあえずほっと胸を撫で下ろした女ダークハンターだったが……。
「もしかして、それ男よね?」
何かに感づいたのか、リンに質問をする。
「え、う、うん」
答えたリンは、先ほど赤くなった顔をより赤くさせ、しかし正直に答える。
「も、もしかして、リン? あなた……」
早速結論に至った女ダークハンターだったが、みなまで言う前に横から声を掛けられる。「レンちゃんもういいじゃない。妹さんも無事に帰ってきたんだし。ソレくらいにしておきなさいって。ねっ♪」
声の主は金鹿の酒場兼冒険者ギルドのマスターである女性。
「マ、マリスさん!? ……え、うん。まあ何事も無かったみたいだし、いいんだけど……」
妹の緊急事態(複数の意味で)に気が動転していたレンだったが、マリスの絶妙な割り込みにその勢いもすっかり無くなり、それ以上追求することを諦めた。
「とりあえずテーブルに座って落ち着いて。食事もまだでしょ」
マリスに促されてテーブルに着き、二人は遅い昼食をとることにした。


 エトリアの街は小規模なだけに店自体も多くない。主要の店と言えば、宿屋である「長鳴鶏の宿」、武具からアイテムまで全般を扱う「シリカ商店」、酒場兼冒険者ギルドの「金鹿の酒場」、「執政院ラーダ」、そして医療全般と薬を扱う「ケフト施薬院」。
世界的に有名なこの街も、実際覗いてみれば小さな街だということが一目瞭然だ。
フォスターがある程度街を把握した頃にはすでに夕方。「長鳴鶏の宿」へ戻る前に再度「金鹿の酒場」に寄ることを決めて中へ入る。するとマスターであるマリスがフォスターに声を掛けてきた。
「あら、朝の人。丁度よかったぁ~。さっきから一人冒険者の人が待ってるのよ」
どうやら朝の話を覚えていたようで、ギルドに来た冒険者に話をしていてくれたらしい。その中で一人、「迷宮へ入る」という同じ目的を持った冒険者がいたようだ。
「そいつは、使えるのか?」
あくまでも足を引っ張らないという部分に重点を置いていたフォスターだけに、最も気になる部分だといえるが、その点についてもマリスはOKサインを出した。
「結構キャリア長いわよ。レンジャーなんだけどそこそこ有名よ。どう? これなら足を引っ張ることはないんじゃないかなぁ?」
などと会話をしていると、奥のテーブルから女の子が近寄りフォスターに話しかけてきた。
「ねえねえマリスさん、この人でしょ? 昼間言ってた人って」
「えぇそうよ。ほら、良さそうな人でしょ?」
マリスとにこやかに会話を交わす少女は、見るからにレンジャーという装い。
「……もしかして、こいつか?」
フォスターは驚きを隠しつつクールに発言する。
「えぇ。レンジャーのティリアちゃん。弓に関してはなかなか有名な使い手なのよ」
自分のことのように話すマリスに、いささか贔屓目な部分が見て取れるが、そんなことを思っているとティリアが話しかけてくる。
「“こいつ”ってひどいなぁ。ティリアって名前があるんだから、名前でよろしくね。ん~っと、君の名前は?」
誰に対しても軽い口調のティリアは、一瞬でそういう性格だと分かるくらいの分かりやすさがあった。
「フォスターだ」
悪い気はしないが、初対面の人間に対する距離の詰め方に問題があるんじゃないかと思いつつ、フォスターは名乗る。
「フォスターね。うん、おっけー。じゃあギルド作ろう。ね。ね!?」
すでに仲間になったも同然な流れでギルド作成を促すティリア。
「ちょっと待て、まだお前を仲間にするなんて言った覚えは……」
言い終える前に、マリスの顔がフォスターの目の前にアップで押し寄せる。
「迷宮に入る冒険者が欲しいって言ったわよねぇ~? いいじゃない、悪い子じゃないんだし。それに足だって引っ張らないわよ。それに、この娘を逃したら当分いないかも知れないわよ? それじゃあ困るでしょ?」
強引。その言葉しか当てはまらないほどの勢いで詰め寄られるフォスター。マリスの予想できなかった行動と言動で、一瞬フォスターの冷静さが消失する。
「い゛っ!? わ、分かったよ分かった。なるよなる、仲間になるって」
時間にしてわずか数秒。クールを装いっていた仮面が、このとき音を立てて崩れ落ちた。
「……あらぁ意外~、フォスター君ってそういう顔もするのねぇ~。もしかして、昼間のクールさはお芝居とか?」
「私、初対面だからイメージ固まる前でよかったよ~。えへへ」
自分のイメージを作り上げてきたつもりだったフォスターだったが、見られてしまったものはしょうがない。気を取り直して普段の自分に戻る。
「それはそれ、これはこれだ。お前ら誰にも言うなよ」
一応口止めを強要する努力だけは惜しまない。
「う~ん、どうしよっかなぁ~。あ、じゃあやっぱりティリアちゃんとギルド結成ね♪ それで手を打つわ」
マリスがイタズラな笑顔をフォスターに向けながら言う。
「何だか脅迫みたいでいやだなぁ~そういうの」
と口では言いつつも、ティリアは満面の笑顔を向ける。
「でもさ、とりあえずソレを抜きにしても、一緒にギルド結成しようよ。もうギルドの名前は決めてあるんだから」
調子がいいだけではなく、用意の良い娘さんでもある。
「じゃあ決まりね。ギルド登録するわね。はいティリア、ギルド名教えて」
フォスターを挟んではいるが、フォスターを素通りして話は進んでいく。
「ギルド名はね、メロンパン」
先ほどと同じく、ティリア満面の笑顔で発言した。
「可愛い名前ね~」
マリスはいたってのんきに答える。
あまりの驚きに、一瞬声も出なかったフォスターだったが、もう粗は出せないと自分を戒めつつ、いつものように冷静な口調で抗議をする。
「おい待て! 何だそれは。子供の遊びじゃないんだぞ」
しかし、そんな抗議もティリアの前ではあまり意味が無かった。
「いいじゃんいいじゃん。親しみやすい方がいいに決まってるでしょ。もう書いちゃったからだめだよ~だ」
ニコニコ顔のティリアは、とても満足そうだ。
「はいはい、登録完了っと。じゃあメロンパンの二人。これからもよろしくね」
こうして、フォスターとティリアの二人で……もとい、ティリア一人でギルド「メロンパン」が結成された。

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